【現役ライターへインタビュー】とうふ「病気で悩んでいる人に、1つでも多く選択肢を持ってもらいたい」

精神疾患がありながらも、ライターとして活躍する現役ライターにお話を聞く、『精神疾患とわたし』。第1回は、Twitterで『とうふのライティング講座』を発信する、とうふさんに、病気を持ちながら仕事を続けるポイントについてお伺いしました。

≪今回の現役ライター≫

とうふ_本人画像

とうふ (Twitter: @onikudaisuki19
旦那さま・猫3匹と暮らす20代フリーライター。
気分の波に悩まされながらも小学校~高校を過ごし、うつ病の薬を飲みながら高校を卒業。社会人になってから措置入院をした際に、双極性障害と診断される。パニック障害・PTSDを持ちながら、会社員を経て2019年12月に開業。
現在は薬で病気をコントロールしながら、ライターとして月収60万円を売り上げる。

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一時は措置入院になるほど病気が悪化したことも

――Twitterでは、「昔、措置入院をしていたこともある」と書いていたけど、それはいつのことですか?

前職の会社員になる前に、1年くらいアルバイトの時期があって、そのときに措置入院をしました。

※措置入院
自傷他害のリスクを持つ精神疾患のある人が対象となり、精神保健指定医2名以上の診断のもとに入院措置がおこなわれる制度。都道府県知事の命令が必要で、精神保健福祉法で定められている。

 

――仕事のストレスがあったのでしょうか?

仕事のストレスもそうですし、そのときのライフスタイルがすごくきつかった。

飼っていた犬のお世話がめちゃめちゃ大変で……。家事もワンオペで、仕事も行ってという生活がすごくきつかったんです。旦那も夜中の12時くらいまで仕事で、休みの日は友達と遊びに行っちゃってた。

孤独で、何のために頑張ってるか、わからなくなってしまって……。それで、来世に期待しようと思っちゃったのよね(笑)

 

――それで措置入院になってしまった、と。

実はそれまで、うつ病と診断されてたんです。高校生のときに、学校に行くと涙が止まらなくなってしまって、病院に行って診断されました。大学に入って環境が変わったからか、症状もよくなりましたが、新卒で会社に入って、希死念慮と自傷行為がやめられなくなって、うつ病の再発と言われました。

だから、ずっとうつ病の治療をしてたのですが、措置入院のときに双極性障害ということが判明して……。それまで飲んでいた薬が、あまり効果がなかったことがわかりました。それからは、合う薬が見つかって、徐々によくなっていきました。

※双極性障害
気持ちの落ち込むうつ状態と、高揚する躁状態が交互に現れる精神疾患。躁状態が重度のⅠ型、軽度のⅡ型に区別される。うつ病は抗うつ薬で治療するが、双極性障害の場合は躁期に抗うつ薬を使用すると、気分が上がりすぎてしまうことがあるため、薬のコントロールが重要。

 

――その後、アルバイトから会社員になったのですよね? 会社員になってからも、症状は続いていたのでしょうか?

受付を担当していたのですが、その会社の受付はワンオペだったんです。代わりの社員がいなくて、「どんな状況でも行かないと」って感じだった。

行かなきゃという使命感があったから、なんとか行っていたけど、それが長く続くわけもなくて……。「体調を崩したらどうしよう」と思うと、どんどん体調が悪くなってしまい、結局休めないプレッシャーがつらくて、辞めてしまいました。

「ライターの仕事をしてみたい」ってツイートしたんです

――(筆者は)とうふと、ブロガーとして知り合ったんだよね。あのときはまだ会社員だったと思うのですが、どうしてブログを始めようと思ったのでしょうか?

受付の仕事はフロアに私1人しかいなくて、めちゃくちゃ暇だったんです。お客さんが来たら対応するだけだから、それ以外の時間は好きなことしてていいよって言われました。PCは貸してもらえたので、そこでできることを考えて、ブログとアフィリエイトだなって(笑)

 

――じゃあ、仕事中にブログ書いてたんだ!?(笑)

そうそう!許可はあったけどね(笑)

でも、ブログは最初まったく稼げないじゃないですか? 全然稼げないな、と思っていたときに、ライターという仕事が副業でできるのをネットで知りました。

ブログと親和性がいいっていうのも知って、「ライターの仕事をしてみたいな~」ってツイートをしたんです。そうしたら、ツイートを見た企業が「よかったら、うちでライターしませんか?」って声をかけてくれました。それが1件目の契約でしたね。

それ以外には、ブロガー仲間が「外注ライターを探している人がいるから、紹介するよ」って言ってくれて。Twitterから一気に2つの会社と契約できて、そこからライター業が始まりました。

とうふ_作業風景
現在はライティングの収入が月60万円を突破。外注ライターを雇わず、すべて自分で執筆している。

 

――クラウドソーシングから始める人が多いけど、「人との繋がり」からっていうのもありなんですね! じゃあ、最初は副業ライターだったということですか?

始めて2か月くらいは、副業でライターをしていました。双極性障害がうつ転して退職して、そのまま専業になりました。人と一緒に働くのがしんどくて……。社内の人との世間話すら、つらかったです。

※うつ転
双極性障害の人が、うつ期に入ること。躁期に変わったときは躁転という。
うつ転すると、意欲の低下や集中力の欠如など抑うつ気分が強くなる。

やばいと思ってちょっとずつ勉強をするようになりました

――ライターの仕事をするようになって、すぐに開業届を出したのでしょうか?

会社辞めたのが9月で、開業届出したのは12月です。病気が重かったこともあって、最初のころは、月収十数万しか稼げなかった。ライター1本では、やってけないのかな? って不安で、最初は出せませんでした。決心のためにも開業届を出して、そこからすごく頑張るようになったんです。

 

――最初から稼いでいたわけじゃなかったんですね。でもそこから、半年くらいで月収50万円を達成したのですよね? その当時はどのくらい仕事をしていましたか?

そうです。開業して5か月で50万円を達成しました。朝9時半からスタートして、夜の0時くらいまで仕事をしていましたね。

 

――え? 夜中の0時までですか?

19時半~21時半は、夕食を作ったりお風呂に入ったりするために、時間を取っていましたけどね。ただ極端で、少ない日は朝9時から17時までで終わっちゃうこともありました。

 

――それは、「少ない」とは言わないのでは?(笑)開業から5か月で月収50万円というのは、成長スピードが早いと感じるのですが、勉強などはしていましたか?

ライターになって1年くらいは、勉強していませんでした。してないまま50万とかいっちゃって、収入と実力が全然見合ってない感じになっちゃってた。そもそも、コピペチェックも知らない状態から入ってきたんです(笑)

最初のクライアントが、いろんなことを教えてくれる人で、その人に聞きながらライターをしていました。でもそれではやばいと思って、そこからちょっとずつ勉強し始めたんです。

 

――仕事しながら学んでいったんですね。

でも、それでよかったと思っています。なにもない状態で本だけ読んでも、流し読みしてしまったり、「なんかよくわからないけど、そういう決まりがあるんだ」みたいに思ったりしてしまう。ある程度経験積んでから読むことで、「あ、私のここがダメなんだ」というのが明確になって、具体的な対策をとれるようになりました。

とうふ_本
本棚には、仕事のために読んだ本がずらりと並ぶ。

 

――確かに、最初は本だけ読んでもすべてわからないかもしれないですね。実務をこなしながらだったら、「ここのことを言ってるんだ」っていうのはわかるけど。

そうなんです。だから最初に、本を何冊も読んでから始めようとするのは、おすすめしていません。ライティングの本を1冊読んだら、実践を重ねるのがよいと思います。

私が会社員として働けない理由に「完璧主義な性格」っていうのがあるんです

――ライターになってから、病気の症状はどうですか? 気持ちが楽になったとかはありますか?

めちゃめちゃ楽になりましたね。私が働けない理由の1つに、「ものすごい完璧主義な性格」っていうのがあるんです。命を削って働いて全力でやって、でもちょっと抜けてるからいろんなことが心配になっちゃう。

提出した資料に抜けはないかとか、夜中に急に思い出して眠れなくなって……。会社から帰ってる途中に「私カギ閉めたっけ?」みたいなのが気になって、家からわざわざ会社に戻ったこともありました。

そういう完璧主義なところと、仕事のミスに対する不安が、ずっと自分の首を絞めてたんです。でもライターは在宅だから、不安な部分はすぐに確認できるし、なにかミスしても大きな損害につながることは少ない。すごく気持ちが楽になりました。完璧主義な私でも、肩の力を抜いて仕事ができるんです。

 

――なるほど。でも双極性障害だと、気分が落ちることもあると思います。体調が悪くて予定がずれ込むことはありませんか?

実はあまり体調不良を理由に、ライティングを休むことがないんです。スランプみたいなのはあるんですけど、体調が悪くても書くこと自体は苦痛じゃなくて。逆に休みにするほうが落ち込んでしまう。「あ~今日は何の生産性もない1日だったな~私ダメだな~」と思ってしまうんですよ。

体調が悪いときは、ゆっくりでもいいから、ちょっとだけ仕事をする。そうすると、「つらいのによく頑張った!」という気持ちになるんです。

 

――とうふにもスランプってあるんだ!? 数か月に1回くらいの間隔で来るのでしょうか?

いや、もうしょっちゅう!1か月に2回くらい(笑)

 

――多い(笑)スランプには、どう対処しているのでしょう?

勉強するしかないと思っています。ライターの仕事にも完璧主義が入ってきちゃって、この文法は間違ってるとか、構成がどうだとか少し言われただけで、「私は頭悪いし、才能ない」みたいに落ち込んでしまう。

でもそこで落ち込んでてもしょうがないから、とりあえず本を読んで勉強して、ちょっとでも前に進むしかないとしか思っています。

とうふ_勉強風景
知識が薄い分野は積極的に勉強する。現在はFP3級の勉強中だという。

私は文章を書くことが好きだから、それだけでいいかなって

――Twitterでライター情報を発信したり、ライター講座をされていますが、始めようと思ったきっかけはありましたか?

「どうすればライターになれますか?」と、たくさんの人から質問をもらったのがきっかけです。個別で対応するのではなくTwitterで発信すれば、みんなが見れるようになるのでは、と思って発信し始めました。

また病気を公言して活動するなかで、「私はうつで働けないから、とうふさんみたいに自分らしく生きていけるのが羨ましい」という連絡をいただく機会も多かったんです。病気で悩んでいる人に、1つでも多く選択肢を持ってもらいたいと考えています。ライターという選択肢しかないわけじゃなくて、もしやりたいと思うのなら、力になってあげたいなって気持ちでやっていますね。

 

――では、今後はライター講座の仕事を、活発にしていきたいと思っているのでしょうか?

全然(笑)私は自分で価値を生み出したい、という思いがあるんです。

実は教えるのは、まったく得意ではなくて……。Twitterで発信するのは苦ではないのですが、個人講座は頼まれて始めた経緯があるんです。やっていて、自分の生き方はそうじゃないなって最近思いました。

講座やコンサルティングではなく、自分でやりたいっていう性格なんです。あと、お金をもらって講座をやっていると、自分の体調が悪いときも対応しなくちゃいけないのもあって、難しいと感じています。

 

――気持ちに余裕がなくなってしまうということですね。では、今後はどんなライターになりたいと考えているのでしょうか?

そうですね、月収100万は目指すとして……。

 

――それがまず、すごいですからね(笑)

取材ライターやLPライター、編集者になりたいという希望は、今はまったくありません。双極性障害を悪化させないためには、与えられたライティングをするだけという今の仕事が、一番向いていると思っています。確かにスキルアップすればすれだけ稼げるし、いろんな仕事を任せられるようになるけど、それが自分の負担になることがわかっているから、現状維持が一番です。

「自分は取材ができない」と落ち込む人がたまにいるけど、そういうことではないと思う。色々できるのがすごいってわけじゃなくて、自分に合った働き方であれば、何でもいいんです。私は文章を書くことが好きだから、それだけでいいかなって思っています。

とうふ_猫
Twitterでたびたび登場する愛猫。3匹の猫ちゃん、旦那さまと暮らす。

実力主義の社会だから、真面目な人はやりがいを感じられる

――精神疾患のある人へ、1つの選択肢としてライターがあると伝えたいとおっしゃっていましたが、働きやすいと感じるポイントはどこですか?

体調に合わせて仕事量が調節できるのと、対人関係がないことですね。そもそも、精神疾患を持ってる人は、真面目な人が多いと思うんです。だから会社にいると、つらくなっちゃう。周りの人たちが真面目な自分とは違って、ちょっといい加減なところがあったり、自分の完璧主義な性格が馬鹿にされちゃったりするんですよ。

でもライターなら、頑張れば頑張った分だけ評価されるし、頑張らなくても誰にも文句を言われない。だからすごく働きやすいなって思います。

 

――なるほど。実際にライター業をしていて、やりがいに感じる部分はどこでしょう?

ライターの仕事は、クライアントからの評価や報酬に反映される。実力主義の社会だから、真面目な人にはめちゃめちゃやりがいを感じられると思います。

記事を書いてるときはあまり実感が湧きにくいのですが、記事やLPの作成は、会社の売上自体にかかわる大切なものなんです。自宅にいながら企業のマーケティングを左右する、大きな仕事ができるところはやりがいを感じます。

とうふ
Twitter(@onikudaisuki19)にて、ライター情報『#とうふのライティング講座』を発信中。

この記事を書いた人

もさこ
気分変調症+うつ病を発症しながら、フリーランスのライターとして活動。臨床検査技師資格やAFP/2級FP技能士の資格を活かした医療・金融記事が得意。
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