精神疾患をもちながらも、ライターとして活躍する現役ライターにお話を聞く『精神疾患をわたし』。
第2回は、占い師としても活動する杉本しほさんに、毒親との付き合い方や実家を離れてフリーランスとして活動する際のポイントをおうかがいしました。
≪今回の現役ライター≫
杉本 しほ(Twitter:@sugimotoshihono)
占い師としても活動する関西出身の20代フリーライター。
大学2年生のときに不安障害を発症し、文章を書き始める。その後、大学を中退して2019年6月からフリーランスのライターとして活動を始めた。
精神的な負担となっていた実家を出て、関東のフリーランス専用シェアハウスに住みながらライターを続ける。現在は関西に住む。
不安障害で大学中退・就職・退職そしてフリーランスへ
ーー大学中退後に、すぐにフリーランスのライターとして活動し始めたのですか?
そうです。大学では経済学を学んでいたのですが、不安障害を発症して翌年退学しました。不安障害※が分かったときに、自分の気持ちをエッセイとして書き留め始めたのがライターを始めたきっかけです。
でも実は、一度は会社員として就職したこともあったんですよ。
※不安障害
ふとしたことで恐怖を強く感じるようになり、日常生活に支障をおよぼす状態。身体的症状として、動悸やめまい、発汗などが生じる。息が詰まるような感覚が生じる人もいる。
ーーそうだったのですね!それはどうしてでしょう?
実はフリーランスとして働くのが不安になって、大学も中退してしまったので就職経験がなく、会社員もやってみようと考えました。制作会社の障がい者雇用枠で、ライターアシスタントをしていました。
ただ、会社員は向いていなかったみたいで、3か月くらいで辞め、フリーランスに戻った経緯があります。
ーー会社員でもライター関係のお仕事を選ばれたんですね。もともと文章を書くのは好きだったのですか?
そうでもなかったですね。最初はなんとなく、気持ちを書いて吐き出している感じでしたね。そこから書くことが好きになって、現在は平均月収20万円くらいにはなりました。
「実家が精神的負担になっているのでは?」と思い切って実家を出ました
ーーしほさんは、最近引っ越しして関東に来られましたよね。
2021年の秋に、関西から引っ越してきました。もともとは実家に住んでいたのですが、両親がいわゆる毒親※で……。実家に住んでいるときは居心地の悪さを感じていました。
でも、両親は私の不安障害がよくなってからじゃないと、実家は出ない方がよいと考えていて。たしかに、収入も安定しないフリーランスでは実家を出にくく感じていました。
※毒親
由来は「毒になる親」といわれ、子どもへの過干渉により悪影響をおよぼす保護者を指す俗語。毒母、毒父とも。
ーーそんな状況の中、実家を出るきっかけになった出来事はあったのでしょうか?
これといって大きな出来事があったわけではないのですが、両親の言うとおり「不安障害がよくならないと実家は出れない」と勝手に思い込んでいて。
よく考えたら、「実家が精神的不安になっているのでは?」と考え始めたことが、実家を出るきっかけになりました。
ーーしほさんがご実家を出て一人暮らしするとご両親に話したとき、どのような反応でしたか?
「すぐに戻ってくるだろう」と思ったようで、引き止められることはありませんでした。今も心配はしているみたいですが、適度に連絡を取って心配ないことを伝えています。
ーー引っ越しにはお金がかかりますし、フリーランスだと賃貸を借りるのも大変だと思います。その点はどう工夫しましたか?
今住んでいるのはフリーランス専用のシェアハウスなので、普通の賃貸よりフリーランスでも審査に通りやすかったのだと思います。場所は特に気にしていなくて、たまたまTwitterで見つけたシェアハウスが関東にあったので、ここに決めました。
シェアハウスなので家具は付いていましたし、必要なものは宅配便で送ったので1〜2万円程度で引っ越せましたね。
ーー家具付きで家賃が安いのがいいですね!それに、フリーランス専用のシェアハウスって楽しそうです。
周りがフリーランスばかりなので、仕事ができる共同スペースもありますし、イベントなんかも開催されます。案件を紹介しあったりもできるので、仕事をするうえでも魅力だと思います。
ーーご実家を出てみて、何か変わったことはありましたか?
実家を出たら、体調がかなりよくなったと感じています。やっぱり精神的負担になっていたのだなと。
今は心療内科の通院が月に1回程度になっていて、不安を感じる場面も少なくなりました。実家にいたときはほとんど毎日症状が出ていましたが、今は月に1回2回くらいです。薬も毎日ではなく、症状が出たときに飲むだけになりました。
ーーそうだったんですね。体調の管理はどのように対処されていますか?
最近は土日を休みにして、仕事を忘れてのんびりするようにしています。休みの日が決まっているので仕事の日も頑張れるし、休みは休みとして好きなことができるので、体調は管理しやすいです。
「私、霊感があるんですよ」占い師としても活動!きっかけは?
ーーしほさんは占い師としても活動されていますが、どういった経緯があったのでしょうか?
もともと占いには興味があって、自分で勉強して趣味としてやっていました。私、霊感があって、それをnote※に書いたんですよね。そうしたら、「ぜひ占ってほしい」とお声をもらって。ただ、無料でやるのは大変なので、料金を設定して占い師として開業しました。
※note
文章や画像、動画を投稿できるメディアプラットフォームの一種。無料でも利用でき、ブログのように自由に投稿できる。
ーー実際に私も占ってもらいましたが、結構当たってるんですよ!これからは占いにも注力していく予定ですか?
ありがとうございます。
実は、占いをメインにしていこうとは考えていません。というのも、占いの依頼は時期によって多くなったり少なくなったりするからです。年末年始の依頼は多いのですが、そのほかの時期は少なくなるので、今までどおりライターを主軸に活動していく予定です。
「仕事ができない」と思うのではなく「自分に合った仕事を探す」ことが大切
ーーちなみに、ライター業ではどのようなジャンルを書かれているのでしょうか?
メンタルヘルスが多くて、整体や美容系も書くことがあります。好きなジャンルや書きたいジャンルを絞って、自分からメディアに応募しています。
ライターを始めたときはクラウドソーシングを使うこともありましたが、今は直接契約が多いですね。
ーー精神疾患をもっているライターやライターに興味をもっている人に一言お願いします。
「仕事ができない」と絶望しないでほしいと思います。自分のペースでできる仕事はどこかに必ずあるので、自分に合った仕事を探すことが大切です。