記事を執筆していると、「この意味合いなら漢字表記?」「この表現方法って適切なの?」と迷うことがありませんか?
クライアントによっては、執筆時のルールがない場合もあり、悩むことも多いでしょう。そんなときに便利なのが、『記者ハンドブック』の活用です。
『記者ハンドブック』は、文章のプロである新聞記者が必携する本であり、適切な文章表現のルールが網羅されています。
ここではWebライターが『記者ハンドブック』を持つべき理由を説明します。
言葉のルールに悩むWebライターが『記者ハンドブック』を持つべき理由
文章を書く上で、言葉のルールに悩む人は『記者ハンドブック』を持っておくと便利です。
私自身、Webライターを始めて間もない頃、基本ルールが分からずに何時間も悩んでしまい、時間を無駄にした経験があります。「もっと早く持っておけばよかった」と素直に感じています。
まずは、Webライターが記者ハンドブックを持つべき理由を具体的に確認しましょう。
基本ルールが分かる
『記者ハンドブック』は文章全般のルールが解説される書籍です。用字用語をはじめ、句読点の使い方など、文章を作成する上で迷いやすいポイントが明記されています。
執筆経験が浅いライターは、基本ルールが分からず、悩みながら書くこともあるでしょう。曖昧なまま書き進めた文章は、結局修正する羽目になり、とても大変です。
『記者ハンドブック』があれば、迷ったときにルールが確認できるため、悩むことが少なくなり、執筆時間の短縮にも繋がります。経験の浅いライターは、1冊持っておくと安心して執筆ができるでしょう。
文章表現の根拠になる
表記が統一されていない文章は、『読みにくい』要因の一つとして挙げられます。迷いながら書いた文章は、相手に伝わるものです。表現方法や意味を理解しないまま書いた文章は、支離滅裂となってしまうからです。
言葉選びに迷った時に『記者ハンドブック』を活用すると、クライアントへ記事を納品する際の、文章表現の根拠として示せます。
正しい表現を選択できるため、自信を持った執筆ができるでしょう。明確な根拠があると、クライアントから高い評価を受けやすいですよ!
『記者ハンドブック』とはどんな本?
『記者ハンドブック』は共同通信社より出版された、文章に携わる人のためのルールブックです。同社は自社HPにて『記者ハンドブック』を次のように紹介しています。
メディア関係者だけではなく、社内文書やSNS発信などで文章を書く人、日本語を大切にしたいと思う人、そんなすべての人に手に取っていただきたい用字用語集の決定版です。
(引用:プレスリリース/ニュースリリース配信の共同通信PRWire「【新刊情報】「記者ハンドブック第14版」「世界年鑑2022」3月15日発売」)
『記者ハンドブック』は、1956年に初版が発行された書籍です。今回発売された14版は、関連用語をより分かりやすく解説することに注力しています。
初版発行より改訂を加え、記者を支えてきた歴史があるため、文章に携わる人であれば持っておきたい書籍でしょう。
正確な文章表記や表記ゆれを防止するための本
『記者ハンドブック』は、正確で分かりやすい文章を書くためのルールが書いてあります。ルールが統一されることで、表記ゆれなどが防止できるため、初心者からプロまで重宝される一冊です。
重複表現は使わない
✕被害を被る →〇被害に遭う
✕従来から →〇従来
✕ただ今の現状 →〇現状
出典:共同通信社,「記者ハンドブック」,2022年,(p.113-114)
さまざまな表現(語彙)が学べる本
『記者ハンドブック』には、用字用語集がまとめられており、さまざまな表現が学べます。
執筆中に迷いが生じたときに確認すると、たくさんヒントが得られます。
文章を書く上で行き詰ることが多い人は、手元に置いておくと悩む時間が短縮されるので、おすすめです。
特に使い分けに注意が必要とされる表現は、次のように使用例が記載されており、一目でわかるようになっています。また、判断に迷う場合は平仮名書きを推奨しています。
<使用例>
- 手を上げる(ホールドアップ) →手を上げて声援に応える
- 手を挙げる(表明) →手を挙げて意見を言う
- 名を上げる(有名になる) →優勝して名を上げる
- 名を挙げる(列挙) →候補に名を挙げる
出典:共同通信社,「記者ハンドブック」,2022年,(p.129)
『記者ハンドブック』の使い方
第14版・記者ハンドブックは、752ページにおよぶ書籍です。ページ数が多いため、初めて手にとる人は『使いこなせるか不安』と思う人もいるでしょう。
しかし、記者ハンドブックは読了する本ではないので、安心してください。自分を助けるツールとして活用できるため、使い方を知っておくと便利です。
ここでは記者ハンドブックの使い方の一例を紹介していきます。
①適切な漢字・かな・送り仮名の使い分けの判断
文章を書く上で、漢字・かなの使い分けや、送り仮名が分からない場合に『記者ハンドブック』を使用しましょう。
たとえば『よい』という言葉の使い方を調べると、次のように漢字・ひらがなで意味が変わります。使い分けが難しい場合は平仮名を使用しましょう。
用語 | 使用例 |
良い【一般用語】 | 頭が良い、気分が良い、手際が良い |
善い【倫理・道徳にかなう】 | 善い行い、善い人 |
よい【構わない、しやすい。】 | 住みよい、それでよい、もうよい |
出典:共同通信社,「記者ハンドブック」,2022年,(p.443)
クライアントによっては、平仮名で書くよう指定される場合もあるため、基本はクライアントのレギュレーションに従ってください。
②適切な文章表現方法の判断
『記者ハンドブック』には、誤用や不適切な表現など、注意する必要がある言い方が掲載されています。一例を確認してみましょう。
注意したい表現方法
✕愛想を振りまく → 〇愛嬌を振りまく、愛想がいい
✕明るみになる → 〇明るみに出る、明らかになる
✕一同に会する → 〇一堂に会する
✕笑顔がこぼれる → 〇笑みがこぼれる
誤って使われやすい語句を知っておくと、誤用を防げるメリットがあります。指摘を受けないと気付きにくいため、事前に勉強しておくことも大切です。
③文章作成の基本ルールの確認
『記者ハンドブック』には、文章を書く上で知っておきたい『句読点』『数字表記』のルールが掲載されています。自己流にならないよう、分からないときは、ルールを確認してから記載するようにしましょう!
特に数字の表記は、ルールを知らない場合、誤用しやすいので注意しましょう。納品前に最終チェックをすると、記事の品質向上が目指せますよ!
<使用例>
- 一人旅(2人旅は洋数字)
- 第三者
- 2等分
- 二面性
- 三大祭りなど※原則ルール
数量や順序を示す場合→洋数字
慣用句→漢数字
出典:共同通信社,「記者ハンドブック」,2022年,(p.527-541)
前版との比較『第14版・記者ハンドブック』の改訂ポイント
『第14版・記者ハンドブック』は、2022年3月15日に改訂。前版は2016年3月24日と、約6年ぶりにリニューアルされ、改訂内容が注目されています。
見た目の違いは、前版よりも文字の大きさが小さくなっている点、ページ数が前版よりも16ページ少なくなっている点(768P→752P)です。前版よりも、すっきりした印象を受けました。ここからは、改訂内容のポイントを紹介します。
ポイント①『異字同訓』の用例が整備された
1つ目のポイントは『異字同訓』の用例が整備された点です。異字同訓とは、以下のように違う漢字ではあるものの、似た意味であり、訓読みが同じものを指します。
例:「足・脚」「体制・態勢・大勢」など
今回の改訂版では、迷いやすい異字同訓の使い方、語義・注釈が見直しされたことで、より分かりやすくなりました。
たとえば『体制』のページを確認してみると、大枠は変わってはいないものの、『医療提供体制』『ワクチン接種・供給体制』など、時代に合わせた使用例が追加されています。
13版 | 14版 |
体制 【恒久的・長期的な仕組み・様式、システム化】旧体制、教育体制、強権体制、挙党体制〔長期的〕、現体制、資本主義体制、社会体制、新体制、生産体制、責任体制、戦時体制、体制内、独裁体制、反体制、有事即応体制(※1) | 体制 【長期的な仕組み、国家・社会・組織のシステム】医療提供体制、旧体制、教育体制、強権体制、挙党体制〔長期的〕、現体制、資本主義体制、生産体制、(ワクチン)接種・供給体制、戦時体制、体制内、独裁体制、反体制、有事即応体制(※2) |
※1引用:共同通信社,「記者ハンドブック」,2016年,(p.323) ※2引用:共同通信社,「記者ハンドブック」,2022年,(p.310)
ポイント②『ジェンダー平等への配慮』の項目が追加された
2つ目のポイントは、今まではなかった項目『ジェンダー平等への配慮』が追加されたことです。性差を前提とする表現や強調する表現は、用語だけではなく、文脈においても注意が必要だと、注意喚起されています。
Webライターは文章を書く職業のため、知っておかねばならないことがたくさんあります。言葉の表現方法は、時代に合わせて常に変化することを認識し、正確な表記ができるよう、執筆前に記者ハンドブックでチェックしましょう。
気を付けたい表現
- オネエ →使用不適切
- 性的少数者(LGBT)→性的少数者など(LGBTなど)
- 性転換 →性別の変更
出典:共同通信社,「記者ハンドブック」,2022年,(p.478-480)
『記者ハンドブック』を必携し、文章力を向上させよう
『記者ハンドブック』は、言葉のルールを確認するツールです。分かりやすく明瞭な文章を書くためには、分からないことを曖昧なままにしないことがポイントです。
言葉選びに迷った時は『記者ハンドブック』を活用し、正確な表現方法を見つけましょう。ただし、基準となる『レギュレーション』があるクライアントの場合は、レギュレーションを守ることが第一条件のため、注意が必要です。
『記者ハンドブック』をうまく活用して、記事のクオリティ向上を目指しましょう!